情報要求の 4 レベル
Google だったり、Yahoo! だったり、毎日何らかの情報を求めて、検索ってやってると思う。このとっても日常的な検索という行為をすこし考えてみたい。
R. S. Taylor の 1968 年の論文(Question-negotiation and information seeking in libraries)において、人間の情報要求(information need)が 4 つのレベルに分類されている。『言語と計算 - 5 情報検索と言語処理』(徳永健伸)から抜粋。
- 直感的要求(visceral need)
現状に満足していないことは認識しているが、それを具体的に言語化してうまく説明できない状態 - 意識された要求(conscious need)
頭の中では問題を整理できるが、あいまいな表現やまとまりのない表現でしか言語化できない状態 - 形式化された要求(formalized need)
問題を具体的な言語表現で言語化できる状態 - 調整済みの要求(compromised need)
問題を解決するために必要な情報の情報源が同定できるくらい問題が具体化された状態
- 直感的要求(visceral need)
おなかが空いたなあ。 - 意識された要求(conscious need)
おなかが空いたんで、そろそろなんか食べたいんだけどな〜。なんか、こってりしてて、おなかにたまりそうなものがいいなあ。 - 形式化された要求(formalized need)
近場のラーメン屋で豚骨ラーメンでも食べようかな。こってりしてれば、丼ものでもいいかな。 - 調整済みの要求(compromised need)
そうだ、高田馬場のすた丼にしよう!
- 直感的要求(visceral need):おなかが空いた
なんと検索すればいいのかわからない…… - 意識された要求(conscious need)
「こってり」、「おなかにたまる」? いまひとつピンとこない検索語…… - 形式化された要求(formalized need)
自分がいるのは「新宿」だから、「高田馬場」ぐらいまでは行ってもいいかな。ならば、場所の検索語は「新宿」か「高田馬場」。食べたいものは、「ラーメン」か「丼」。 - 調整済みの要求(compromised need)
検索語は決定。「高田馬場」と「すた丼」。
「調整済みの要求」や「形式化された要求」ならともかく、それ以前のレベルだったりしたら、検索語の決定すらおぼつかない。コレならどうかな? じゃあ、アレは? ……といろいろ試しているうちに、「調整済みの要求」や「形式化された要求」に近づくヒントらしきものが見えてきたり、偶然欲しいものにたどりついたり。
先日、こんなことがあった。サイト全体の HTML ファイルに共通のフッタ外部ファイルとして JavaScript で埋め込んでいる。そのファイルを毎回サーバから呼び出して、ちゃんと読み込んでほしいんだけど、ブラウザによっては PC の中に溜め込んだ情報(ローカルキャッシュ)を読み込んでしまって、こちらの希望する結果が得られない。ローカルキャッシュを読み込まないような回避策が欲しい。
これなんかは、まさに「意識された要求」レベル。せめて「形式化された要求」レベルにすべくいろいろ検索語を考える。「キャッシュ JavaScript 回避」、「JavaScript 外部 キャッシュさせない」、「no cache 外部ファイル インクルード」……などなど。検索語をとっかえひっかえ検索してみるが、なかなかびしっと決まるキーワードが思いつかない。
現在のウェブ検索は、基本的には「調整済みの要求」に対応するもの。検索結果ページに表示されたテキストを参考にしていけば、「形式化された要求」にもある程度は答えてくれる。しかし、それも知識と経験に基づいた人間からの歩み寄りによってしか実現されないことも多い。つまり、検索とは、既知情報から既知情報を経由して未知情報を探し出すこと……と定義されるものなのかもしれない。既知情報からしかスタートできない……このあたりが、キーワード検索の難しさなんだろうね。
追記:
……とかなんとか書いていたら、きょうの TechCrunch におもしろい記事が。
Powerset検索エンジンのデモ、初公開
記事によると、「在職中に亡くなった政治家(politicians who died in office)」といったフレーズで満足のいく検索結果が表示されると言う自然言語処理を応用した新しい検索技術だとのこと。この一例をもってどうこうう段階ではないけど、情報要求のより曖昧なレイヤーまでカバーできるようなものが今後登場してくるのかもしれない。
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